1988年58歳で Amsterdam のホテルで謎の死をとげた不運のトランペッターです。

( photo by manmarukumi )
この Chet's Room では私の大好きなラッパ吹きのチェット・ベーカーの事やお気に
入りの盤や読んだ本の中で面白かった秘話などを紹介していきたいと思います。
ジャズファンなら、もうチェット・ベーカーの紹介など必要ないと思いますが、まあ
とにかく”独断偏見自己満足の世界”なのでご了承ください。
彼のヴォーカルのスタイルは好き嫌いがはっきり分かれるとはおもいますが。。。
初めて彼の歌と演奏を聴いたのは1976年頃だったと思います。私はその頃、兄達
と一緒に住んでいました。ラジオから流れてきたチェットの歌声を聴いて兄と私は
同時に顔を見合わせてしまいました。兄も同じ事を思ったのでしょう。
”今の 男? 女? どっちや” 兄の質問でした。
”う〜ん、わからへんなぁ男のような気もするけど”
それがチェットとの最初の出会いでした。
Androgynous 的な声質が My Funny Valentine のメロディーと微妙に合って
いて、今にも崩れてしまいそうなガラス細工のような繊細な声に完全に恋してしま
ったのでした。その後、彼のルックスでよけいに好きになってしまったのは言うま
でもありませんが。(いやぁ〜若いチェットは文句なしにかっこ良かったですねぇ)
まるで囁くように吹く彼のトランペットはヴォーカルと同様に歌っているのでした。
それ以来、チェットの様々な演奏を追い続けてきましたが、彼の根底にあるものは
亡くなるまで少しも変わっていないという事でした。
メロディー・ラインをいつも大切にし、最小限におさえたインプロヴァイゼーションで
曲のオリジナリティーをリリカルに表現していました。
そのシンプルさが彼の性格そのものを浮き出していたように思えます。
(ここでは無様に喧嘩で(不本意に)叩きのめされて前歯が折れています)
彼のコレクションが 85 枚を突破しました。未だに欲しい盤が次から次へと発売
されて、もういいんじゃないと自分では言い聞かせているもののやはり手が伸びて
しまいます。 哀しいかな Fanatic ってこう言うことなのよね。
まっそういう感じで、集めた盤から好きなモノを一枚ずつ紹介してゆきましょう。
ます第一枚目は、孤島に持っていく為の10枚の中に選びたい一枚。
この盤は、チェットがヨーロッパから5年ぶりにアメリカに帰ってきた1964年の録音
です。その18ヶ月ほど前にパリでトランペットを盗まれて以来、チェットは知人から
もらったと言うこの Flugelhorn を吹いています。
短い期間ではありますが、彼はこの音色がとても気に入ったようで、リッチで深い
音色が出て色々な表現が出来ると喜んで吹いていたようです。
このホーンの音色は確かにリッチで優しくチェットのスタイルとピッタリ融合しました。
繊細なだけでなく安定感も増してそのプレーからは今までに感じられなかった何か
が存在するような気がします。その証拠に私がとてもこの盤を気にいって比較的に
聴く回数が他の盤よりも多いので間違いない!
なんて言うとちょっとおおげさだけど、この盤のチェットの演奏やヴォーカルから新鮮な
息吹を感じるのですね。

Chet Baker / Baby Breeze (1964)
1. Baby Breeze
2. Born to Be Blue
3. This Is the Thing
4. I Wish You Love
5. Everything Depends on You
6. One with One
7. Pamela's Passion
8. Touch of Your Lips
9. Comin' Down
10. You're Mine, You
11. Sweet Sue, Just You
12. Taste of Honey
13. Think Beautiful
14. I Wish You Love (Alternate take)
15. Think Beautiful (Alternate take)
Chet Baker (flh) Frank Srozier (as, fl)
Phil Urso (ts-1,3,5, ts, arr-2,4) Hal Galper (p, arr-1,3,5, p-2,4)
Michael Fleming (b) Charlie Rice (d) NYC, Nov.14,1964
Kenny Burrell (g) Chet Baker (vo) Bob James (p)
Michael Fleming (b) Charlie Rice (d) NYC, Nov.20, 1964
Bobby Scott (p,arr) Kenny Burrell (g) Chet Baker (vo)
same location, date
Limelight records LS-86003
メンバーも良いですね、お馴染みの Phil Urso, Frank Srozier のサックスに
Hal Galper のピアノ、それに私の大好きな Bobby James まで参加しています。
一曲目の Baby Breeze の軽快なスタートで、皆の乗りの良さが感じられます。
60年代のチェットには男らしさが増して太い線が感じられると思います。
多分この一曲目でそれが読み取れると思いますよ。
50年代のチェットはまだ青さがあって新鮮だし、いつの時代も彼らしさがあり
チェットのファンにとっては彼の変化、スタイルでなく成長の過程なのかも
しれませんが、その時代の流れに見せる音の表情がたまりません。
この盤では、チェットはヴォーカルに力を入れています。自分なりにそういう方向に
持っていきたいと彼はこの頃語っています。この盤に入っているヴォーカルはとても
詩に対する表現のアプローチが素晴らしく豊かで、純粋に心から吹き出てくるもの
のような気がします。変な細工がなくストレートに歌っています。
Touch of Your Lips でもうメロメロ、こんなに素敵なのは後にも先にもこの盤
でしか聴けない。
Kenny Burrell のギターの伴奏だけで歌う 11と12 は味わい深く Burrellの伴奏
が気持ち良いほどにチェットに寄り添っています。じっくり味わってください。
Taste of Honey は、もう絶品です。ちょっと寒気がするくらい心を揺さぶるもの
があります。
私にとってこのチェットのヴォーカルは最高作品なんじゃないかって思えるほど。
この盤は、まん丸の一押し!
さて、次は何を選ぼうか沢山ありすぎて喜ばしい。

http://chetbakertribute.com/chet.htm
↑のリンクはチェットのファン・サイトへ、沢山のヴィデオ・クリップなど楽しめます。

















